紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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JR名松線の家城駅〜伊勢奥津間が平成28年に復旧・運行へ

  平成21年10月8日に東海地方を襲った台風18号によって、名松線の家城駅から伊勢奥津駅間で、線路上への土砂流入や、線路下の土が削られる被害が生じた。このため、名松線の家城駅〜伊勢奥津駅間(17.7 km)が不通となり、JR東海はこの区間をバス輸送に振り替えた。

 不通になって1年半が経過したので、JR東海に復旧計画はないのではないかと危惧していたが、去る5月20日に、三重県、津市、JR東海が平成28年を目途に、家城〜伊勢奥津間を復旧させるという協定書を締結した。

 協定書の概要は下記の通り。
1.津市と三重県は、当該区間の鉄道の安全運行を確保するよう、必要な治山事業、水路整備事業を実施する。
2.運行再開後についても、鉄道施設が被災することがないよう、対策事業を施した施設及びその周辺の保全を継続的に行う。
3.JR東海は、津市及び県対策事業の完了に合わせて、鉄道、施設の復旧工事を完了し、鉄道運行を再開する。

 この協定書を実施するために、三重県は復旧までに総額5億円をかけて鉄道周辺の土砂崩れを防ぐ治山工事を行い、津市も同様に5億円をかけて雲出川沿いの路肩崩壊等を防ぐ水路工事を行うようである(伊勢新聞)。

 名松線の復旧は地元からの強い要望によって実現するものであり、ひとまずはたいへん喜ばしいことと思う。

 しかし、災害前から名松線は赤字路線となっていたので、協定書の2項目の県と津市が担う施設及びその周辺の保全、災害対策などに多くの経費がかさみ、財政負担が過重となる事態になるならば、運行が継続できなくなることもあり得る。

 このため、運行再開後における利用者の確保と名松線を利用した地域の活性化促進が重要となる。

 利用者確保のためには、例えば、三岐鉄道北勢線や福井鉄道などのように全国のローカル線で試みられている利用促進の事例を集め、効果がありそうなものを実施する必要があり、このためには地元住民をはじめとする名松線サポーター制度のようなものを組織し、住民が中心となって息の長い運動を展開する必要がある。また、三重県と津市、松阪市は沿線振興を図る施策を実施していく必要がある。

 特に、名松線を利用する乗客の利便性、周辺住民の使い勝手が良くなるアイデアを取り入れて、運行上の改善を図っていくことが重要である。

 名松線沿いには、南北朝時代から戦国時代にかけて現在の美杉町に本拠を構えた北畠氏に関係するいろいろな名所・旧跡がある。また、森林セラピー基地や豊かな自然もある。これらの地域資源を最大限に生かすことがこの地域の活性化と持続性を高める重要なポイントであると考える。

 昨日、通勤途中の電車の中で、近鉄の広告を見たが、「お伊勢参りハイキング全10コース」というものであり、参加費は無料で、おそらくガイドさんがついていると思われるが、沿線沿いの観光資源を生かして乗客数を確保する活動がなされている。名松線の場合にも、無料の歴史探訪ハイキング等のコースを幾つか作り、ガイドさんは地元の歴史に詳しい方にお願いし、あるいは検定制度を作って研修後にガイドさんに応募してもらい、JR東海と地元自治体がガイドさんの費用を持ち、乗客数の増加と地元観光の振興にあたるということがあってもよいのではないだろうか。

 いずれにせよ。運行再開までにはまだ間があるので、地元を中心として名松線と名松線沿いを活性化するさせる方策を練って、復旧と運行を待つようにしたらどうであろうか。(写真は、名松線終点の伊勢奥津駅舎、駅舎の左半分には津市八幡出張所、八幡地域住民センターも入っている)


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